2013年9月27日金曜日

膝蓋骨脱臼について


 走る時に後ろ脚を庇ったり浮かして走る、スキップをする、そんな症状が見られたことはありませんか?
その症状膝蓋骨脱臼かもしれません。

 膝蓋骨脱臼とは後ろ脚の膝関節のお皿が外れ、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)が外れてしまう疾患です。膝蓋骨は膝蓋骨十字靭帯で大腿骨滑車溝(大腿骨についている膝蓋骨を収める溝)に収まっています。

 滑車の側壁を超え、内側にずれるのが「内方脱臼」、外側にずれるのが「外方脱臼」といい、小型犬の脱臼の場合は圧倒的に内方脱臼、大型犬の場合は外方脱臼が多いです。

 この疾患はすべての犬種で発生しますが、特に多いのがトイプードル、マルチーズ、チワワ、ヨーキー、ポメラニアン、パピヨンなどの小型犬です。先天性のものと後天性のものがあり小型犬は先天性のものが殆どです。後天性の場合は高所からの落下や打撲、滑りやすい床などによるスリップなどが原因になります。

 また、環軸椎亜脱臼(首の背中側にある環椎[第1頸椎]と軸椎[2頸椎]が亜脱臼と呼ばれる比較的軽度にずれる状態)を起こしている子は膝蓋骨脱臼になる可能性があります。そのため、膝蓋骨脱臼だけを診るのではなく、他の要因も考慮し、総合的に診断できる専門医の診療をおすすめします。その他にも、膝蓋骨脱臼を起こしている子は前十時靭帯に負担がかかるために断裂を併発してしまう可能性があるので注意が必要です。

 症状は軽いものから深刻なものまであり、軽い症状の場合飼い主も気づいていないケースもあります。基本的には触診で診断可能で、レントゲンでは更に正確にわかります。また、成長過程の場合、骨の湾曲が起こり見た目からもわかる場合があります。

治療としては保存療法か外科手術がおこなわれます。症状がほとんどない子や歳をとったワンちゃんは症状が進行しにくいため、ほとんど外科手術は必要ないです。しかし、若齢で歩行に支障をきたすほど重度の場合や体重10kg以上の大型犬は外科手術が必要になる場合があります。

 もし、おうちのわんちゃんの歩き方に違和感がある場合、もしかしたら膝蓋骨脱臼がおこっているかもしれません。当院でもすぐ検査できますので是非一度相談にいらしてください。






2013年9月15日日曜日

変性性脊髄症


変性性脊髄症 (Degenerative Myelopathy)
 先日、大学で診察した病気を紹介します。

 後ろ足を引きずって歩くコーギーちゃんが、大学病院に紹介されてきました。
このような症状が見られた場合にはコーギーに多い椎間板ヘルニアをまずは考えてしまいがちですが、他の脊髄疾患にも同様な症状が認められることがあります。

痛いところもないのに、コーギーにこのような症状がある場合には、変性性脊髄症 (Degenerative Myelopathy)という病気も考える必要があります。

 変性性脊髄症は痛みを伴わず、ゆっくりと進行する脊髄の病気です。
10歳くらいから症状が現れ、後ろ足から前足、首へと進行していきます。これらの症状は3年くらいかけて進行します。首に症状が出た場合は、呼吸がしにくくなります。

後ろ足をすって歩く
 腰のふらつきや後ろ足の交差
 ウサギ跳びのような歩き方

現在のところ、変性性脊髄症に対する確定的な生前診断法は残念ながら確立されていません。

血液検査や脳脊髄液検査で炎症性疾患を否定し、MRICTまたは脊髄造影検査などの画像診断で脊髄の圧迫性病変を除外することで、変性性脊髄症の疑いを強めます。
また、その子によっては変性性脊髄症と椎間板ヘルニアを両方持っていることもあるのです。

近年、日本ではウェルシュコーギーの変性性脊髄症が確実に増えてきています。このような症状が見られたら、整形外科を得意とする動物病院で精密検査を受けることが大切です。